糖尿病の原因と遺伝

糖尿病の患者さんは、両親や兄弟姉妹、ご家族の方も糖尿病である場合が多く、昔から遺伝の関係性が研究されてきました。
最新の研究結果によると、糖尿病は遺伝的素因が関連する疾患と考えられています。
しかし、親が糖尿病なら子供も糖尿病、というように、病気自体が遺伝する訳ではありません。 
では、『糖尿病の遺伝』とはどういうことなのでしょう。
糖尿病の原因と遺伝との関係を考えてみましょう。

糖尿病と遺伝の関係

厚生労働省が公表した健康日本21(糖尿病)によると、糖尿病の発症危険因子は、『加齢』『家族歴』『肥満』『運動不足』などが挙げられています。


『家族歴』とは、家族や血縁者の病歴のことですから、糖尿病の発症には遺伝的な要素が関わっているということです。 


しかし、糖尿病になる特定の遺伝子異常は未だ証明されておらず、複数の遺伝子と複数の環境要因が発症に関与する多因子遺伝性疾患と考えられています。 


つまり、糖尿病という病気が遺伝するのではなく、『糖尿病になりやすい体質』が遺伝するのです。

日本人の遺伝子

そもそも日本人は、糖尿病になりやすい遺伝的体質なのをご存知ですか?


糖尿病は、血糖を下げるための唯一のホルモンであるインスリンの働きが悪くなったり、分泌量が少なくなることで発症します。 


実は、日本人を含むアジア人は、欧米人よりもインスリンの分泌量が少ないのです。


肥満は糖尿病を誘発する原因のひとつですが、欧米人ほど太っていない日本人に糖尿病が多いのは、インスリン分泌能力の低さによるものです。


同じアジア人である中国やインドでも、近代化が進むにつれ食生活が欧米化し、糖尿病が深刻な問題となっています。 


もともとインスリンをつくりだす力の弱い私たちアジア人が、欧米人と同じような食生活を送っていれば、糖尿病が増えるのも当然かも知れません。

環境要因は変えられる!

残念ながら、私たち日本人は糖尿病になるリスクの高い民族です。


更に、血縁者が糖尿病であった場合には、糖尿病になりやすい体質を受け継いでいるかもしれません。 


けれども、体質や遺伝子だけで糖尿病の発症が決まるわけではなく、食べ過ぎや運動不足などの環境要因が加わって、はじめて糖尿病を発症すると考えられています。 

糖尿病を予防するための生活習慣の改善は、決して難しいものではありません。 


急に食事の量を半分に減らしたり、10キロのランニングをしなくてはならない、というのであればちょっと二の足を踏みますが、『昨日食べ過ぎたから、今日は少し食事の量を減らそう』とか、『時間が余ったから一駅分歩いてみよう』など、意識を持って、出来ることからスタートすることが大切です。


無理なく継続的な改善を積み重ねて、遺伝子や体質に負けない環境要因(健康的な生活習慣)をつくりましょう。

糖質制限ダイエット

毎年、様々なダイエット法が、テレビや雑誌などのメディアで取り上げられ、現れては消えを繰り返しています。特に、『〇〇するだけダイエット』という手軽で簡単なダイエット法は、食品や手法を変え、尽きることなく登場します。

肥満と糖尿病は非常に密接な関係にありますので、これらの簡単なダイエット法を取り入れた予防・改善に期待される方も少なくありません。


しかし、簡単にできるダイエットにも、意外なところに落とし穴が潜んでいるもの。


特に食品を制限したり限定したりするものは、直接健康に被害を及ぼすこともあるので注意が必要です。

糖尿病と炭水化物

糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度が高くなりすぎ、高血糖状態が続く病気です。

高血糖状態が続くと血管や血液の状態が悪くなり、脳梗塞や動脈硬化など様々な重大な病気を引き起こしやすくなります。


痛みや目に見える顕著な症状は殆どありませんが、放っておくと恐ろしい病気が糖尿病といえるでしょう。

糖尿病治療は、血糖をコントロールする食事療法と、肥満や過食を改善するための運動療法が基本です。

特に体内に入ってくるブドウ糖の量そのものを制限することが、最も効果的とされています。

ブドウ糖が多く含まれるといえば、砂糖を連想します。

もちろん砂糖もブドウ糖と果糖が結びついてできたものですが、ご飯やパン、麺などの炭水化物にも、ブドウ糖は多く含まれているのです。

甘いものを控えるだけでなく、主食の摂取量も見直す必要があります。

糖質制限(炭水化物制限)ダイエット

糖質制限ダイエットは、その名の通り、ご飯やパンなどの糖質摂取を抑えれば、その他は何でも食べてOKという、簡単で取り入れやすいダイエット法です。


血中に増えすぎたブドウ糖は、インシュリンにより血管の外へと追い出され、脂肪細胞に蓄積されます。つまり、脂肪になる糖質を制限することで太りにくい身体になる、という考え方です。
また、糖質は真っ先にエネルギーとして利用されるので、糖質を減らすことで脂肪を燃焼しやすくなるとも言われます。

このダイエット法は、『炭水化物制限ダイエット』『低炭水化物ダイエット』『糖質制限ダイエット』『低炭水化物ダイエット』など様々な呼び方がありますが、根本的な考えは同じです。
しかし、ブームがエスカレートすることで、もっと簡単に早く効果の出るような『糖質抜き』『炭水化物抜き』ダイエットなど、極端な方法も広がっているのが現状です。

糖尿病の方でも、食事治療で効果の出にくい人や、食事制限がつらくて実践できないという人が、自己流でこのダイエット法を取り入れたりしています。


しかしブドウ糖には、脳のエネルギーになるという大切な役割があります。


ブドウ糖は、糖尿病の方には敵のように見えてしまいますが、無くては困る大切な栄養素。


医師の診断を仰ぎ、適切な食事を心がけていただきたいものです。

糖質制限ダイエット

画期的なダイエット法として取り沙汰されていた糖質制限ですが、徐々に否定的な意見も出ています。


『欧米で提唱されはじめた糖質制限が、アジア人の私たちも同じような効果が得られるのか』『昔の日本人は炭水化物中心の食生活で糖尿病を発症していないのだから、炭水化物を食べる方が効果的だ』など、現在では様々な意見や考え方が見られます。


糖質を全く食べないという極端なダイエットに警鐘を鳴らす意味もあるかもしれませんが、今まさに研究段階といったところではないでしょうか。

手軽なダイエット法、手軽な食事療法に流されがちな私たちですが、糖質制限ダイエットの賛否はともかく、『バランスの良い食事と適度な運動』に勝るものは無いのかもしれませんね。